ルームシェア
まずは、ルームシェアとはどのようなものかをご説明しましょう。
ルームシェアとは、マンションの一室または戸建住宅を賃貸し、家族や恋人関係に無い複数の入居者と共同生活を営むことです。海外の映画やドラマでは良く見られる光景ですが、日本でも最近放送された人気テレビドラマの影響もあってか、首都圏では若者の間でこのような生活スタイルの広がりを見せています。一人当たりの家賃は、近隣のワンルームを借りるよりも安くなるほか、同年代との交流を目的として入居する若者もいるようです。しかし、まだルームシェアを敬遠するオーナーも多数存在するためか、ルームシェアができる物件の数は極端に少ないようです。都内で数ヶ月間も入居者が見つからず、空家の状態が続いていた戸建住宅を、ルームシェア専用の賃貸住宅に変更したところ、それ以後入居者の入れ変わりはあっても、常に満室の状態が続いているという。
では、このルームシェアを分譲マンションの分譲賃貸で行ったとしたら、どのようなメリット・デメリットが予想されるでしょうか?
オーナー側のメリットとしては、入居者が決まり易いということでしょう。そして家賃の設定方法やお部屋の数・大きさにもよりますが、普通に賃貸するよりもトータルの家賃収入が増えることも予想されます。しかしデメリットについては、慎重に検討を重ねなければいけないようです。
○デメリット1:近隣住人との騒音等のトラブル
ルームシェアを行う若者たち数人が出たり入ったりする時のドアの開閉音や度々行われる引っ越し作業の音、夜遅くまで続くホームパーティーの音、ゴミ出しのルールの違反、時にはルームメイト同士による喧嘩など、近隣住人とのトラブルも多くなる可能性があります。
○デメリット2:管理員・管理組合との手続き
分譲マンションへ入居・退去する際には、その旨の連絡と書類の提出を管理会社や管理員へ行うため、その手続きだけでもかなり煩雑になります。
○デメリット3:修繕工事
一部屋だけのクロスを張り替えるとしても、都度機材を搬入し作業を行うため、作業代が高くなります。また住宅内の共同使用している部分に傷や破損した部分があっても、その犯人を特定することが難しく、修理費用の請求が困難となります。
ルームシェアとは、戸建やルームシェア用に作られた賃貸住宅であれば良いのでしょうが、分譲賃貸でのルームシェアはまだまだノウハウが確立されておらず、たくさんの課題・問題が残されているようです。
禁煙物件の需要
分譲賃貸コラム「21.入居者の募集条件」で、賃貸物件の室内及びその敷地内においてタバコの喫煙を禁止すると入居者を限定してしまい、入居者を募集する上ではマイナス要因となり得る、というご説明を致しましたが、一方ではこんな話もあります。
最近では、分譲賃貸マンションだけに関わらず、一般の賃貸マンションやアパートでも禁煙を条件とし、入居者を募集する物件が増えてきています。また弊社で賃貸管理を行っている分譲賃貸マンションのお部屋でも、実に3割以上のお部屋が禁煙を条件として賃貸しております。禁煙という入居条件の賃貸物件が増えてきたこと、また喫煙率自体が低下していること、タバコ1箱が1,000円になるという報道が盛んであること、そして非喫煙者にとっては逆に禁煙という条件のお部屋を好むことなどから、禁煙を条件としているお部屋がマイナス要因無く、入居者が決まっております。その他禁煙を条件とすることで、入居者の退去時におけるクロスや襖の汚れ等の原状回復トラブルも減るだろうとも言われております。あるお部屋では、非喫煙者が入居される場合、家賃を2,000円下げて入居していただいているという賃貸物件もあると言います。
入居者を募集する際に禁煙を条件とした時には、喫煙率の高い日本では、まだマイナス要因となる可能性が高いと思われますが、最近のタバコを巡る時代背景や賃貸取引でのトラブルを考えると、これからはプラス要因の方が高くなるものと思われます。
定期借家契約の見直し
定期借家契約は、平成12年3月1日に施行され、施行から4年後の平成16年3月を目途に新法の施行状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとされていました。そして定期借家契約を更に普及させるために、「居住用建物について、当事者が合意した場合には、定期借家権への切替えを認めること」や「定期借家契約締結の際の書面による説明義務を廃止すべきである」や「居住用定期借家契約に関して強行規定となっている借主からの解約権を廃止する方向で検討すべき」などの意見が出ているものの、現在に至るまで、何ら変化の無い状態が続いております。
そんな中、近年では不動産会社や一部の団体などの推進活動により、ようやく定期借家契約が一般の方々にも認知され、良質な賃貸住宅の供給促進や転勤者の資産活用(リロケーション)などでは、その成果が見え始めております。そして、最近、賃貸住宅を探されている方の中には、定期借家契約で借りることのできる賃貸住宅を探しているという方も徐々に現れてきております。これは、引越しの手間は余分に掛かるものの、契約更新がある普通賃貸借契約よりも家賃が安く、礼金も安く設定されている場合が多く、そして契約更新が無いため更新料も掛からないからという理由からでしょう。引越しの手間をあまり苦に感じないという方であれば、賢い選択肢かもしれません。
このように、もっともっと定期借家契約が世に定着すれば、普通借家契約と定期借家契約の家賃や礼金設定方法にも差が無くなり、更に良質な賃貸住宅の供給促進に繋がることでしょう。そんな時代も、そう遠くは無いでしょう。
保証人代行会社の存在
賃貸借契約では、賃借人(借主)の他に連帯保証人を付帯しなければならないのが一般的です。しかし近年の高齢者社会による影響か、または金融業の新たな分野としての発展かは定かではないが、賃貸借契約に必要な連帯保証人を代行する保証人代行会社(賃貸保証会社とも言います)の存在が、その脚光を浴びております。
この保証人代行会社とは、各会社によってその内容に違いはあるが、ある大手保証人代行会社では、初回1年間の保証委託料として賃料の50%を支払い、その後は毎年1万円の年間保証委託料を支払うことで、賃貸借契約の保証人を代行してくれます。最近では初回の保証委託料とその後の年間保証委託料を無くし、月々の賃料の3%を保証委託料として毎月支払うプランも登場。そして保証の範囲は、家賃48ヶ月分のほか、訴訟費用、残置物撤去・保管・処分費用にまで及びます。
この保証人代行会社の利用により、賃貸人(貸主)の家賃収入がより確実なものとなり、また弊社のような賃貸管理会社においても、入居者審査がより確実なものとなり、そして賃借人にとっても、頼みづらい保証人を探す手間が省けます。今後、このような保証人代行会社のニーズが、益々高まるものと思われます。
しかし、注意しなければならない点があります。それは、ここ最近このような保証人代行会社が急に倒産するというケースが見受けられます。倒産する保証人代行会社は、保証委託料が安く、審査が緩いのが特徴。万が一、保証人代行会社が倒産した場合は、賃借人には保証人がいない状態となるため、改めて他の保証人代行会社を使用いただくか、相当の保証人を立てていただかなければなりません。
基本的には、このような保証人代行会社を賃借人に使用してもらおうとしても、一般の大家さんでは取り扱うことはできません。賃貸管理会社を通じての利用が原則となるため、賃貸管理会社との管理委託契約が必要になります。
分譲マンションの資産価値
分譲マンションとは、投資用として販売されるマンション以外は自己居住用(自ら住む為の住宅)として購入する方が多く、一般的には新築当初の自己居住率が100%近くになります。しかし年数が経過するごとに居住者の住み替えや転勤等により、賃貸として第三者に貸し出す部屋が増え、自己居住率が徐々に下がってきます。そして賃貸率の上昇が分譲マンションそのものの資産価値を落としているという否定的な見方をされている方も、多々いらっしゃるようです。これは区分所有者として自己居住している居住者は共同生活に対するモラルが高く、賃貸で入居している居住者はそのモラルが低いということを言われているのでしょう。
分譲賃貸に住む賃貸の入居者とは、入居する際に不動産会社や大家さん(区分所有者)の厳しい入居審査を受けており、しっかりとした保証人を立てなければ入居することができません。また所有者が毎月支払っている住宅ローンよりも高い賃料を支払って入居されている方もたくさんおります。そしてマンションの管理規約・使用細則よりも厳しい規定が盛り込まれている賃貸借契約を遵守しなければなりません。決して、分譲賃貸の入居者は区分所有者よりもモラルが低いということは無いでしょう。
実際に、このような賃貸率が高い分譲マンションの方が、逆に資産価値が高い分譲マンションと考えられます。今まで住んでいた分譲マンションに、何らかの理由で住まなくなった、又は住めなくなったという場合、売却するか空部屋にして放置しておくという2つの選択肢しかないようでは、マンションを資産として運用できないということになります。適正な相場の賃料で借り手が見つかりやすいマンションであれば、そのマンションは利益を生み出す運用資産となります。分譲マンションを所有しているだけではただの資産ですが、賃貸などで運用できる資産の方が、資産価値は高い資産と考えるできでしょう。
契約更新料
最近の不動産の広告では、「敷金なし・礼金なし」「保証人不要」「仲介手数料半額」などという、借手には条件の良い物件が目立っています。その中でも「契約更新料なし」という物件が、最近増えてきています。
そもそも更新料とは、賃貸借契約書の条項又は特約にその金額や受領時期が記載されており、賃貸借契約満了前に貸主と借主が互いに合意して契約を更新するとした時に発生するものです。一般的な更新料の相場は新賃料の1ヶ月分から1ヶ月半分とすることが多く、中には新賃料の2ヶ月分としているケースもあります。そしてこの更新料の支払いを避ける為に、賃貸借契約期間満了と同時に新たなお部屋への引っ越しを検討される入居者も多いのが事実です。地域によっては、賃貸借契約を自動的に更新(法定更新)することで、更新料は掛からないという慣習の地域もあり、今後この更新料については、益々見直されるのではないかと思われます。
しかしながら最近の判例においては、特約で交わされた新賃料1ヶ月相当額の更新料は、賃借人の負担とはなるが高額なものではなく、賃借人に対して一方的に不利な特約ではないとする、ある意味更新料を認めた判例があります。
貸主として、借手にはできる限り長い間お部屋を借りていただきたいと思うのであれば、更新料の金額を下げることや受領しないといったことも検討しなければならない時代が間もなく到来するでしょう。
定期借家契約の有効利用
まず定期借家契約とはどのような契約かということを、簡単にご説明いたしましょう。
【定期借家契約とは】
1)契約の更新がない建物賃貸借契約
2)契約期間は自由に設定できる
3)定期借家契約の締結までの間に、契約の更新がない旨等を記載した書面を作成し、賃借人に対して交付しなければならない
4)1年以上の契約期間を設定した場合、契約期間満了の1年前から6ヶ月前までの間に、賃借人に対し賃貸借終了の通知をする
改正法が施行(平成12年3月1日)される前までは、取壊し予定のある建物の賃貸借(期限付建物賃貸借)及び一時使用目的の建物賃貸借という、ごく限られた目的のための賃貸借が存在していました。また更新がある通常の建物賃貸借契約を終了させるには、賃貸人に正当事由が必要とされています。
しかし一戸建や※分譲賃貸の場合、転勤による留守期間だけの賃貸(リロケーション)が多く、そして転勤先から戻ってくるため賃貸借契約を終了させようとした時に、賃借人より高額な立退き料を請求されたり、なかなか退去してくれなかったりというトラブルをよく耳にします。
このようなトラブルを回避する為には、定期借家契約を利用して、転勤先から戻ってくる時期に契約が期間満了により終了するような設定をすると良いでしょう。
【定期借家契約の留意点】
1)更新がある通常の建物賃貸借契約よりも貸主側に有利な契約とされるため、一般的には契約期間によって賃料を低く設定したり、礼金の負担を減らす
2)契約期間に関係なく定期借家契約となるだけで、大手企業の社宅規定に当てはまらなくなり、法人が賃借人となる法人契約の可能性が低下する
3)賃貸借終了の通知を怠った場合、その通知をしてから6ヶ月後に賃貸借は終了する
これらの留意点も考慮して、どのような契約方式にするかを決めましょう。
※分譲賃貸…賃貸業を目的としたアパートや賃貸マンションとは異なり、分譲マンション(区分所有建物)の所有者が貸主となり、賃貸する場合の総称